ブログ

参画教員紹介⑨ 永田 淳嗣 教授(東京大学大学院総合文化研究科)

永田 淳嗣 教授
東京大学大学院総合文化研究科

◆研究活動概要 
 小学生時代を過ごした沖縄の社会を改めて知りたいという動機もあって、国内の研究では沖縄に焦点を当てています。基幹産業の一つである農業の変容をフィールドで観察しながら、亜熱帯の島々からなる沖縄の農業の真の課題と方向性を考えたいと思い研究を続けてきました。私たちのグループの研究は、いわゆる地域課題に対して何らかの解決策を直接的に提示しようというものではなく、産業と社会と資源利用の相互作用のダイナミクスから沖縄農業の構造や動態を明らかにしつつ、当事者から見た、農業が持つ産業としての意味を探っています。

 沖縄農業には、他地域と同様に高齢化や生産性の低さなどの問題が指摘され、政策では大規模機械化や収益性の高い部門の育成が目指されてきました。しかし、私たちの研究からは、たとえば基幹作物とされるさとうきびに関して、沖縄の生態環境や社会状況の下で大規模機械化によって高い生産性を実現するには多くの技術的・経済的制約があることがみえてきました。一方で、生果のパイナップルやマンゴーなどの熱帯果樹は、1972年に沖縄が日本に復帰して以降、生産者の取り組みをてこに成長してきた部門ですが、これだけで農業の産業規模や農地を従来のような水準で維持できるわけではありません。果たして沖縄農業の将来をどのように展望したらよいのか。私たちの研究では、農業に関わりながら沖縄の島々で生活を打ち立てていこうとする人々の、現実の行動や試行錯誤を丁寧に読み解く中から将来の方向性を探ることを重視しています。その方向性は1つに収斂するとも限りませんし、場合によっては産業振興の目標に対する見方や価値の転換を必要とするものになるかもしれません。


◆関連書籍
新井祥穂・永田淳嗣 (2013)『復帰後の沖縄農業―フィールドワークによる沖縄農政論―』 農林統計協会

参画教員紹介⑧ 中村 尚史 教授(東京大学社会科学研究所)

中村 尚史 教授
東京大学社会科学研究所

◆研究活動概要 
 社会科学研究所では、日本の社会・経済の中で「希望」がどのように捉えられているのかを調べるために、2005年末から釜石市で予備調査を行い、2006年度から30~40人の研究者で総合地域調査に乗り出しました。そして、地域における希望の再生にとって、①ローカル・アイデンティティの再構築、②希望の共有、③地域内外でのネットワーク形成という三つの要素が不可欠であるという仮説を見出しました。これらの要素が一つでもかけていれば、地域内での機会損失が生じ、地域再生はうまくいきません。逆に地域経済を活性化するためには、この三つの要素を創造し、つなぎ合わせればよいのではないかと考えました。この「希望学」の視点は、釜石市での調査とともに社会から注目を浴びました。そこで2009年からは福井県でも希望学調査を行いました(『希望学・あしたの向こうに』)。

 

 そうした中で、東日本大震災がありました。震災から半年後、釜石の人から「震災直後を思い出せない」という話を聞き、2011年秋から希望学調査の対象者だった方々を中心とする釜石市民60人を対象に、震災の記憶に関するオーラルヒストリー調査を行いました。震災当時にいた場所で何を考え、どう行動したかをインタビューし、『<持ち場>の希望学』を出版しました。さらに、震災後に何が起き、今どうなっているのかについて2016年から再度、釜石で総合地域調査を行い、2006年の調査と対比させながら分析し、『地域の危機・釜石の対応』を出版しました。ここでは、突発的な危機 (自然災害など)、中期的な取り組みが必要な段階的な危機(産業構造転換など)、長期的に付き合っていかねばならない慢性的な危機 (人口収縮など)というように、危機には多層性があり、それらが複雑に絡みあっていることを明らかにしました。その後、社会科学研究所は、岩手県大槌町に拠点がある東京大学大気海洋研究所とともに、「海と希望の学校 in 三陸」プロジェクトに取り組んでいます。

 ◆関連書籍
東大社研・中村尚史・玄田有史編(2020)『地域の危機・釜石の対応 : 多層化する構造』東京大学出版会。
東大社研・玄田有史・中村尚史編(2009)『希望学2 希望の再生 : 釜石の歴史と産業が語るもの』・『希望学3 希望をつなぐ : 釜石からみた地域社会の未来』東京大学出版会。

参画教員紹介⑦ 小田 隆史 准教授(東京大学大学院総合文化研究科)

小田 隆史 准教授
東京大学大学院総合文化研究科

◆研究活動概要
 私は福島県いわき市出身であり、東大に着任する前は、10年近く、宮城県にある教員養成大学で研究していたこともあり、東日本大震災の被災地の復興や、震災の教訓を生かした防災教育、学校や地域の防災などの研究に力を入れています。
 地域連携の例として、最近、東京都世田谷区が地元の高校と協力して刊行した、区民向けの在宅避難に関する冊子『災害時お家生活のヒント』の監修に関わりました。地方と都市部では地域特性が異なるため、災害への備え方も異なってきます。GIS(地理情報システム)を活用した災害への備えの重要性や留意点を示しながら、地域の実態や実情に応じた防災を考えるワークショップなどを行っています。
 地元の人たちがその場所をどのように表現し、どのように語り継ぐか――地元の人たちにとっての場所の意味を突き詰めていくことも、地理学的に重要なテーマです。また、まち歩きをして、地形を実感したり、人間が自然の恩恵を受けながらどんな街をつくり暮らしているかを知ること、それはその地域の<地誌>を理解することであり、それが地域防災に直結すると考えます。その地域の先人たちが残した災害に残したメッセージを掘り起こし、それをどのように語り継ぐか、その地域の経験から他の地域へ何を伝えたいのか、という視点を持つことが大切です。


◆学校と地域の連携が重要 
 防災においては、平時からその地域を良く知る住民と、地域に根ざした学校が良い連携を構築し、いざという時に、地域が学校等の施設を活用しながら災害を乗り切ることが大切です。マニュアルを作り、どういう状況のときに、どこに避難するかなどの情報を学校が地域と事前に共有しておくのも有効です。近年、「地域特性の把握」は学校防災でも強調されており、教職員の防災リテラシー向上が課題となっています。そのために、教職員や学校と関係がある地域のリーダー等に対する研修や講演や教材開発も行っているほか、海外勤務の経験もあり、JICA研修を通じて諸外国の防災人材育成にも関わっています。

 ◆関連書籍
小田隆史編著『教師のための防災学習帳』(朝倉書店、2011年)
https://www.u-tokyo.ac.jp/biblioplaza/ja/J_00137.html UTokyo BiblioPlaza より
小田隆史・佐々木克敬『学校安全ポケット必携』(東京法令出版、2023年)
https://toho.tokyo-horei.co.jp/shop/goods/index.php?14576

参画教員紹介⑥ 菊池 康紀 教授(東京大学未来ビジョン研究センター)

菊池 康紀 教授
東京大学未来ビジョン研究センター


◆研究活動概要
 どういう地域で在りたいかという夢や目標を地域の方々と明確にしたうえで、地域の取り組みが“ゼロカーボン”にもつながる仕組みづくりを行っています。地域のリソースには限りがあるので、大学がハブとなって企業や地域の方々と連携し、人、知識、技術、情報を組み合わせ、皆で協力し合って考えていける“Co-Learning”を基軸とした“CO-JUNKAN”のプラットフォームをつくり、地域のサステナビリティを追求しています。
 2009年から地域に入り、現在は4箇所の地域でサテライトを置き、活動しています。例えば、長年携わっている種子島では、外からの化石燃料に頼らず、島の中で余っているサトウキビの搾りかすなどから代替燃料を製造するシステムを設計しました。現在は、地元の森林組合や企業、自治体と連携してプラントを建設しています。また、和歌山県や岩手県では、カーボンニュートラルの問題に、農業の担い手確保や人々の暮らしの維持といった課題を関連させながら、地域の大学とともに農林水産業の振興を進めています。さらに、域内に大学のない佐渡島では、廃校になった小学校を活用している酒造を拠点に、地域の教育機関・公共団体と学び合いの場を創出し、エネルギー問題に対処しています。


◆大学が地域と連携するために
 地域のご協力を得るために、専門分野に関する課題(エネルギー問題)を、自治体の重点課題(福祉など)と関連させながらアプローチしています。
 また、大学が地域に入る際には、地域の様々な悩みを受け止める覚悟を持ち、大学が実証試験を終えた後も地域の方々が社会実装していけるように企画することが大切です。例えば、種子島では、補助を受けた実証実験の後はプラントを地域で活用できるように体制を創り域外の企業も関われるような特定目的会社を設立するなどして体制を整えています。

◆関連書籍・資料
大久保達也・菊池康紀・下野僚子(2021)『地域×大学×企業の協創で種子島に「プラチナ社会」を実現!:東京大学未来社会協創推進本部、東大×SDGs: 先端知からみえてくる未来のカタチ』山川出版。
東洋経済「産学公の連携を地域の原動力に、ビヨンド・“ゼロカーボン”を実現する好循環を生み出していく。Beyond “ZeroCarbon”」 2022年11月2日。https://toyokeizai.net/articles/-/627529

参画教員紹介⑤ 山野 泰子 講師(東京大学未来ビジョン研究センター)

山野 泰子 講師
東京大学未来ビジョン研究センター

 

◆研究概要 
 地域に集積した企業間のつながりによってつくられるビジネス生態系に着目し、複雑ネットワーク科学の手法で解析をしています。森の生態系に撹乱をもたらす穴の修復過程から研究の構想を得たのですが、企業間取引において、各企業が一部の取引先を入れ替えることによって生じるダイナミクス(企業の新陳代謝)や、ネットワークの構造的空隙を埋め、クラスター(取引関係が密な企業群)に多様性をもたらす企業の特徴を研究しています。地域に関するこれまでの研究の中には、東日本大震災のあった2011年を含む10年間の時間軸を設定し、東北地方のサプライチェーンを分析した研究があります。

◆研究からの示唆 
 解析の結果、取引先企業が硬直化している企業や、逆に大きく変動している企業の存続年数は短く、そのいずれでもない、中間の新陳代謝度をもつ企業が生存競争において優位となっていることが明らかになりました。また、企業間のネットワークの大きな構造的空隙を埋め、より遠くに位置する異質なクラスター同士を結びつける役割を果たす企業が、地域クラスターに多様性をもたらし、進化を触媒している可能性が高いことが分かりました。企業間ネットワークの進化には、企業の取引先を維持する力と変更する力といった拮抗する2つの力のバランスが重要だと言えます。

 なお、このような示唆は東北地方特有のものではなく、特に企業の新陳代謝度と存続年数の傾向を見ると、中部地方や九州地方においても同様の特徴が確認されています。一方で、地域クラスター毎に進化の系譜が大きく異なることもわかっています。データから特徴を明らかにし、それぞれの地域クラスターの固有性やクラスター間の相互関係を踏まえた施策を検討していくことが大切です。

◆関連書籍
山野泰子(2024)『地域ネットワーク解析:ビジネス生態系におけるつながりの構造と新陳代謝』東京大学出版会。

参画教員紹介④ 内山 融 教授(東京大学大学院総合文化研究科)

内山 教授
東京大学大学院総合文化研究科

 
◆研究活動概要 
 これまで、主に英国の行政機関で取り入られている「エビデンスに基づく政策形成(EBPM)」について研究し、EBPMの制度を日本にも応用できないかと検討してきました。英国では、各省庁に経済学、統計学、社会調査などの分野の分析専門職員が配置されています。こうした事例を参考として日本の行政機関でもEBPMを導入することを提言してきたこともあり、現在、政府ではEBPMが制度化されています。EBPM担当の幹部ポストも設置されました。自治体でも横浜市や広島県などがEBPMを導入して、効率的・効果的な政策形成を追求しています。このうち地域との関わりとしては、特に、広島県でのEBPMの制度構築に初期の段階で携わりました。


◆EBPMと地域 
 どの地域でも財政的資源、人的資源が限られているため、少ない資源をより効率的・効果的に活用し、住民の暮らしを向上させるうえでEBPMは有効です。EBPMは、子育て支援、教育、防災など、様々な地域の政策領域に応用できます。例えば、広島県では、「住民に避難行動を呼びかける際にどのようなメッセージが有効か」を検証し、その結果を防災政策に反映しています。

 広島県などでの事例から、自治体がこのような制度を導入するには、①首長のリーダーシップと②職員の意識と能力の向上が重要だと考えます。政治家や行政職員などがエビデンスを重視して政策を決定することの重要性を理解し、行政組織の中で専門性を育み、大学やシンクタンクなど外部の研究者とネットワークを持つことが大事です。また、大学が携わる際には、住民のプライバシーを守りつつ、いかに行政のデータを活用していくかを検討しなければなりません。

◆関連書籍
大竹文雄・内山融・小林庸平編(2022)『EBPM : エビデンスに基づく政策形成の導入と実践』日経BP日本経済新聞出版。

参画教員紹介③ 赤川 学 教授(東京大学大学院人文社会系研究科)

赤川 教授
東京大学大学院人文社会系研究科


◆これまでの研究
 少子化をテーマに長野県などで研究を行ってきました。少子化問題は、男女共同参画、子育て支援、ワークライフバランス、地方創生などの観点から扱われることが多いですが、その根拠とされる統計を見ると、本当に政策の根拠となりうる妥当な統計なのか、という問題があります。また少子化や人口減少のデメリットは、子どもを増やすことで対応できるのか、すべきなのかという社会構想が中心的なテーマになります。視点を変えれば、一人あたりのGDPが高い国を中心に、世界全体で少子化が進んでいるという事実があります。少子化を受け入れて、各地域でそれぞれの地域の在り方を決定しながら、どのような社会をつくっていくかを考えることが重要と考えています。

 

 また、信頼、互酬性、ネットワーク(社会参加など)の3要素で構成されるソーシャル・キャピタル(社会関係資本)論を用いて地域調査を行ったこともあります。まず、長野県では、限界集落とされる2つの村に着目し、一方では生き甲斐に満足しており、もう一方では友人関係に満足することで健康や幸福度が高まるという特徴を明らかにしました。また、川崎市では、様々な困難を抱えている人々も包摂する在り方を探りました。調査の結果、地域に対する信頼度が高い人、スポーツや趣味などの水平ネットワークに参加している人ほど幸福度が高いことが分かりました。つまり、ソーシャル・キャピタルを高めれば、個人や地域のウェルビーイングが高まるという因果関係が、ある程度明らかになりました。

◆現在の研究
 現在は、猫と人の関係を扱う猫社会学に取り組んでいます。地域に関しては、例えば、地域猫の在り方を自然科学とは別に、社会科学の観点で深めていけたらと思っています。

◆関連書籍
赤川学(2018)『少子化問題の社会学』弘文堂。

参画教員紹介② 川添 善行 准教授(東京大学生産技術研究所)

川添 善行 准教授
東京大学生産技術研究所

 

◆研究活動概要
 2019年末頃から福井県坂井市にある東尋坊の再生プロジェクトに関わっています。2027~28年頃の完成を目指し、坂井市と福井県との共同事業として、建築、まちづくり、都市、マネジメントなど学外の専門家とチームを組んで進めています。

 東尋坊は、柱状節理の崖が有名な、福井県内で最も訪問者の多い地域です。ですが、これまでの地域の歴史を振り返ると、まちのデザインに環境の価値が活かされているようには見えませんでした。この地域では、東尋坊の持つ地質的な価値を人の価値にどう転換していくかが重要になります。そこで、北陸新幹線が敦賀まで延伸したことを機に、人工舗装された空間を減らし、将来的に様々な使い方ができることを意識しながら、新しい価値を創出しようと考えています。

 具体的には、環境価値を保存・継承しながら、歩行者ネットワークを再構築し、その中に新しい商店街とこれまでの生業を融合させます。また、まちのエントランスに地形を感じる大階段を設けるなどパブリックスペースを戦略的に配置するほか、日本海の夕日を眺め夜間の活動にもつながる場を創出するなどして、滞在体験を生み出す空間をつくろうとしています。

 
 長年の観光スタイルを変え、再開発に向けて住民の合意形成を図ることは難しいですが、時間をかけて地道に話し合いを重ねながら、本事業を進めています。

◆学問と地域
 学問は普遍的・抽象的なものを求めますが、地域の価値は抽象化すると何も残らなくなってしまいます。ですので、その地域における個別性を大切に考えながら地域研究に取り組んでいます。

◆関連書籍
川添善行(2024)『Overlap:空間の重なりと気配のデザイン』鹿島出版会。

参画教員紹介① 機構長 坂田 一郎 教授(東京大学大学院工学系研究科)

機構長 坂田 一郎 教授
東京大学大学院工学系研究科


◆研究概要
 深層学習、自然言語処理、ネットワーク分析という情報分野の技法を使って、人及び組織の判断やそれに基づく行動を対象とした研究を行っています。分析の対象としている活動は、企業のイノベーション、科学者による学術研究、商品や店舗に関する個人のレビュー、鉄道を使った人の移動など様々です。
 そうした研究から、例えば、学術活動を対象とした研究では、科学者の「ホットストリーク」はキャリアの中でいつ頃に多く生じるのか、国ごとの研究トピックの先進性や遅れはどのような要因によって生じているのか、といった知見を引き出しています。また、同時に、企業のイノベーション経営や政府の科学技術政策の立案に役立つ実用的な手法やツールの開発も行っています。それらにより意思決定支援を行う枠組みを「テクノロジー・インフォマティックス」と呼んでいます。

◆地域の視点での研究活動
 情報分野の技法と企業の属性や取引に関する大規模データとを用いて、地域の企業コミュニティやそのダイナミクスに関するデータドリブンな研究を行っています。また、それら研究成果を用いた社会貢献活動も重視しています。例えば、東日本大震災の際には、被災地域の企業コミュニティに関する分析を行って中小企業庁に提供したほか、政府が約4,700社に及ぶ「地域未来牽引企業」の選考を行った際には、潜在的な重要企業を見つける方法として「コネクター・ハブ企業」の枠組みを提供しました。


◆最近の書籍
共著(2023)『未来を変えるには:東大起業家講座に学ぶ新しい働き方』講談社。
共著(2024)『クリエイティブ・ジャパン戦略』白桃書房。

日本のODA政策と外国人の社会統合に関する日韓共同ワークショップのご報告

2024年4月24日(水)14:00頃から16:00頃まで、地域未来社会連携研究機構オフィスにて、Korea and Japan Joint Workshop on the Changes in Japan’s ODA Policy and Social Integration of Migrants(日本のODA政策と外国人の社会統合に関する日韓共同ワークショップ)を実施しました。

これは、機構参画教員の一人である小口高教授(新領域創成科学研究科)のご紹介により、移住と開発研究に取り組む、ソウル国立大学のパク・スージン(Soojin Park)教授を始めとする研究者の日本訪問に合わせて開催されたものです。両者に共通する関心事として、人口減少と地域未来という課題があります。今回はこの課題に対し、移住と開発という視点からアプローチしました。当日は、韓国から5名、本学から4名(うち機構参画教員2名)が参加し、社会科学研究所の保城広至教授と三重サテライトの土田千愛特任助教が講演しました。

ワークショップでは、まず、保城広至教授が「The Rise and Fall of the National Interest in Japan’s Foreign Aid Policy (1952-2022): War Reparations, Export Promotion, and Competition with China(日本の対外援助政策における国益の興亡(1952-2022年):戦後賠償、輸出促進、中国との競合)」をテーマに発表しました。戦後という長期的な視座から、アジア地域におけるODAを中心とした日本の対外援助政策の変遷にみられる特徴ついて、その時々の日本政府の態度と国益の捉え方を明らかにしながら論じました。


続いて、土田千愛特任助教が「Migrants’ Social Integration in Japan From the Regional and National Perspectives(地域・国家の観点からみた日本における外国人の社会統合)」をテーマに発表しました。日本の出入国管理政策と多文化共生政策の動向に触れた後、三重県四日市市を事例に、国家レベルでの社会統合政策が不在のなか、地域レベルで外国人を包摂しようとする取り組みを紹介し、政策的課題を指摘しました。


ディスカッションでは、対外援助政策と外国人政策それぞれについて、発表の中で例示したデータの背景にある実態を確認しつつ、日韓の政策の共通点や違いについて意見交換が行われました。

  • タグ:
  • カテゴリー:お知らせ
  • 投稿日:2024年04月24日