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参画教員紹介⑤ 山野 泰子 講師(東京大学未来ビジョン研究センター)

山野 泰子 講師
東京大学未来ビジョン研究センター

 

◆研究概要 
 地域に集積した企業間のつながりによってつくられるビジネス生態系に着目し、複雑ネットワーク科学の手法で解析をしています。森の生態系に撹乱をもたらす穴の修復過程から研究の構想を得たのですが、企業間取引において、各企業が一部の取引先を入れ替えることによって生じるダイナミクス(企業の新陳代謝)や、ネットワークの構造的空隙を埋め、クラスター(取引関係が密な企業群)に多様性をもたらす企業の特徴を研究しています。地域に関するこれまでの研究の中には、東日本大震災のあった2011年を含む10年間の時間軸を設定し、東北地方のサプライチェーンを分析した研究があります。

◆研究からの示唆 
 解析の結果、取引先企業が硬直化している企業や、逆に大きく変動している企業の存続年数は短く、そのいずれでもない、中間の新陳代謝度をもつ企業が生存競争において優位となっていることが明らかになりました。また、企業間のネットワークの大きな構造的空隙を埋め、より遠くに位置する異質なクラスター同士を結びつける役割を果たす企業が、地域クラスターに多様性をもたらし、進化を触媒している可能性が高いことが分かりました。企業間ネットワークの進化には、企業の取引先を維持する力と変更する力といった拮抗する2つの力のバランスが重要だと言えます。

 なお、このような示唆は東北地方特有のものではなく、特に企業の新陳代謝度と存続年数の傾向を見ると、中部地方や九州地方においても同様の特徴が確認されています。一方で、地域クラスター毎に進化の系譜が大きく異なることもわかっています。データから特徴を明らかにし、それぞれの地域クラスターの固有性やクラスター間の相互関係を踏まえた施策を検討していくことが大切です。

◆関連書籍
山野泰子(2024)『地域ネットワーク解析:ビジネス生態系におけるつながりの構造と新陳代謝』東京大学出版会。