三重サテライト通信

東京大学地域未来社会連携研究機構・四日市市主催 公開シンポジウムのご報告

12月11日(日)に、四日市市にあるユマニテクプラザにて、対面とオンラインのハイブリット形式で、東京大学地域未来社会連携研究機構・四日市市主催の公開シンポジウム「スマートシティ化に向けたまちづくりDXの可能性と課題」を開催しました。

本シンポジウムは、今年度、四日市市より当機構が受託しております「四日市市スマートシティ化に向けたまちづくりDXの市民参画に関する研究業務委託」という研究プロジェクトの一環で実施しました。

当日のプログラムについては、下記のご案内をご参照ください。

https://frs.c.u-tokyo.ac.jp/20221118/1534/

当日は、対面では46名、オンラインでは26名の合計72名の方々にご参加いただきました。

シンポジウムでは、当機構の参画教員である、中尾彰宏教授が基調講演を行い、坂田一郎機構長が開会の挨拶とパネルディスカッションのコーディネーターを務め、鎌倉夏来准教授が司会を担いました。

 

基調講演では、中尾彰宏教授が、まず、情報通信が万人の社会経済活動を支える「社会基盤」となり、防災減殺・医療・先進モビリティなど多くの分野で必要不可欠であることをお話ししました。中尾彰宏教授によると、Wi-Fiに比べ、ローカル5Gには、通信が安定しており、セキュリティの面でリスクが低く、地域の課題に合わせてカスタマイズでき、自治体が自ら整備することが可能であるという特徴があります。

また、その事例として、中尾彰宏教授は、時限的、地理的な制限なく、安心安全な登山のための情報提供が必須であるにもかかわらず、通信環境が整っていなく、年間100人以上が遭難しているという課題を抱える富士山地域において、電池で基地局を作り、衛星通信を使ってローカル5Gの接続に成功したという実証実験をもとに、ローカル5Gが防災対策につながることを紹介しました。

さらに、二つ目の事例として、広島県の牡蠣生産が減少しているという課題に着目し、ローカル5Gを用いて牡蠣の生育や海の環境に関するリアルタイムのデータを収集し、採苗・生産高の安定化を図るという、牡蠣の養殖事業のスマート化による地域貢献についても紹介しました。

中尾彰宏教授は、5G、ローカル5Gという最新の情報通信技術を活用し、地域創生を推進し、日本全国で同時多発的に「経済をまわす」重要性を強調しました。

基調講演の後、行政と事業者からの話題提供として、まず、四日市市副市長の舘英次氏より、「四日市スマートリージョン・コア実行計画」における、スマートシティ化に向けた取り組みについて説明がありました。四日市市がこの実行計画で目指すのは、中央通り再編とバスターミナルの整備をスマート化の契機とした、新たな「市(賑わい)」の創出です。そのために、舘氏は、自動運転車両など「次世代モビリティ」の導入、混雑状況の可視化による人流誘導、誰でも情報を活用できるようなオープンデータ化、仮想空間でシミュレーションを行えるようにするための3D都市モデルといった取り組みがあることを紹介しました。

次に、株式会社シー・ティー・ワイ ICTソリューション推進室担当課長の佐野貴規氏が、地域のデータを収集し、アプリやテレビを通して、地域のニーズに応じて、地域情報、防災情報、公衆Wi-Fiなどの提供を目指していることを説明しました。そして、例えば、木曾岬町では、町内にBWA基地局を整備し、高齢化対策として、バスの運行状況を確認できるようにしたり、小学校全児童に木曾岬町が「みまもり端末」を配布し、安全安心なまちづくりを実現したり、災害時においても安定した公衆無線Wi-Fiの通信環境を提供したりしていることを紹介しました。また、四日市市では、中央通り沿いにローカル5Gを整備することによって、テレワーク、混雑・渋滞の緩和、AIカメラによる予兆監視、屋外におけるアミューズメントのための空間整備など、市民が楽しめるサービスの提供を検討していきたいとお話ししました。

最後に、株式会社スマートホテルソリューションズ代表取締役の高志保博孝氏は、ホテルの管理システムをタブレットや消毒機器などのIoTプラットフォームのディバイスなどとつなぐことで、アプリをダウンロードして顔認証登録をすると、チェックインから交通機関の利用、観光を手ぶらで決済可能になる仕組みを説明しました。また、地域の課題に対し、学生などが集い、アイディアを出し合い、解決策を提案するような機会を設け、「DX化はみんなの役に立つ、そのために連携していく」ことを共有する場を提供していることを紹介しました。

パネルディスカッションでは、まず、行政と企業の立場から市民にどんなものを提供できるかについて議論し、人が集まりやすい場所に関する情報発信、まちづくりのための若者の行動に関するデータの分析、市民の安全安心のためのアプリの開発、出店のスマート化やその地域の人だけが時間限定的に参加できるようなバーチャルなお祭りなど、情報通信インフラを活用した人流の誘導による魅力創出といったアイディアが出されました。

次に、行政と産業界の連携について議論し、日常的に住民と接することの多い企業が住民の声を拾いあげること、自治体が中心となって民間事業者が整備し、ローカル5Gを活用すること、企業が利用できるデータを行政が提供し、コンペティションをすることなどが提案されました。

最後に、中央通り以外の地域のスマート化に向け、一地区を「ショーケース化」してスマート化の面白さを体感できるようにしたり、中央通りでやっていることをバーチャル体験できるようにしたり、リアルとデジタルを融合させたり、さらにそれを映像配信したりすることなどのアイディアが出されました。

さらに、会場からの質問に対し、ローカル5Gは、災害時に公衆網が使用できなくなった場合であっても使用可能であり、現場の映像情報をリアルタイムで届けることが可能になるというメリットのほか、高齢者の方でも利用できるような工夫をする必要性があげられました。

今回のシンポジウムを機に、登壇者、参加者の間で産学官の新たな連携も生まれました。

おかげさまで、盛会のうちにシンポジウムを終えることができました。

また、シンポジウムの後には、シンポジウムで行ったアンケート調査のデータ入力を、三重県立四日市高校の生徒さんにお手伝いしていただきました。

師走の日曜日というご多用中にもかかわらず、ご登壇いただきました皆様、お集まり・お手伝いいただきました皆様に心より御礼申しあげます。

本シンポジウムの詳細を含む「四日市市スマートシティ化に向けたまちづくりDXの市民参画に関する研究業務委託」の成果は、今年度末に報告書にて公表する予定です。

1月下旬には、行政の方を対象に、360度カメラを用いた「スマート社会づくりに向けた四日市市バーチャル空間作成実証実験」を計画しております。またご報告させていただきます。