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参画教員紹介 中村 尚史 教授(東京大学社会科学研究所)

中村 尚史 教授
東京大学社会科学研究所

 

◆研究活動概要 
 社会科学研究所では、日本の社会・経済の中で「希望」がどのように捉えられているのかを調べるために、2005年末から釜石市で予備調査を行い、2006年度から30~40人の研究者で総合地域調査に乗り出しました。そして、地域における希望の再生にとって、①ローカル・アイデンティティの再構築、②希望の共有、③地域内外でのネットワーク形成という三つの要素が不可欠であるという仮説を見出しました。これらの要素が一つでもかけていれば、地域内での機会損失が生じ、地域再生はうまくいきません。逆に地域経済を活性化するためには、この三つの要素を創造し、つなぎ合わせればよいのではないかと考えました。この「希望学」の視点は、釜石市での調査とともに社会から注目を浴びました。そこで2009年からは福井県でも希望学調査を行いました(『希望学・あしたの向こうに』)。

 

 そうした中で、東日本大震災がありました。震災から半年後、釜石の人から「震災直後を思い出せない」という話を聞き、2011年秋から希望学調査の対象者だった方々を中心とする釜石市民60人を対象に、震災の記憶に関するオーラルヒストリー調査を行いました。震災当時にいた場所で何を考え、どう行動したかをインタビューし、『<持ち場>の希望学』を出版しました。さらに、震災後に何が起き、今どうなっているのかについて2016年から再度、釜石で総合地域調査を行い、2006年の調査と対比させながら分析し、『地域の危機・釜石の対応』を出版しました。ここでは、突発的な危機 (自然災害など)、中期的な取り組みが必要な段階的な危機(産業構造転換など)、長期的に付き合っていかねばならない慢性的な危機 (人口収縮など)というように、危機には多層性があり、それらが複雑に絡みあっていることを明らかにしました。その後、社会科学研究所は、岩手県大槌町に拠点がある東京大学大気海洋研究所とともに、「海と希望の学校 in 三陸」プロジェクトに取り組んでいます。

 ◆関連書籍
東大社研・中村尚史・玄田有史編(2020)『地域の危機・釜石の対応 : 多層化する構造』東京大学出版会。
東大社研・玄田有史・中村尚史編(2009)『希望学2 希望の再生 : 釜石の歴史と産業が語るもの』・『希望学3 希望をつなぐ : 釜石からみた地域社会の未来』東京大学出版会。