三重サテライト通信

四日市市主催令和5年度多文化共生講演会のご報告

2024年3月19日(火)18:30から20:50頃まで、四日市市総合会館にて、四日市市多文化共生推進室主催の令和5年度多文化共生講演会が開催されましたので、ご報告いたします。当日は、講師として土田千愛特任助教が登壇し、「これからの日本のカタチ―多文化共生のその先へ―」というテーマでお話しました。

講演会は、対面形式のみでの開催でしたが、年度末の平日の夜の開催だったにもかかわらず、68名の方々にご参加いただきました。なお、講演会には、手話の同時通訳と要約筆記も付きました。


講演会では、四日市市多文化共生推進室長様の司会・進行のもと、まず、四日市市市民生活部長様が挨拶され、その後、講演に入りました。講演の内容は3部構成で、第1部では難民のこと、第2部では四日市市のこと、第3部では日本全体のことをテーマに取り上げました。

第1部では、まず、ある難民家族のニュージーランドと日本での経験を紹介した後、日本に主眼を置き、能登半島や陸前高田市など地震の被災地で、炊き出しやがれきの撤去作業に携わっている難民の活動を紹介しました。難民は支援される対象と思われがちですが、社会で活躍できる存在でもあるのですね。

第2部では、四日市市に焦点をあて、主に、外国籍者が最も多い笹川地区で実践されてきた「多文化共生教育」に触れた後、外国籍者の社会参加に関する今年度の四日市市受託研究の調査結果の一部を共有しました。特に、四日市市在住の外国籍者は地域への愛着が非常に高いものの(外国籍者全体では約9割、留学生は全員が地域に愛着を持っています)、地域活動への参加率は低いことが分かりました。そこで、現在ある日本人と外国籍者のかかわりをもとに(外国籍者の半数は地域の日本人と会釈や挨拶を交わしています)、同じ地区に住む日本人と外国籍者が、

ステップ1:会釈
ステップ2:挨拶
ステップ3:簡単な会話(天気など)

というように、少しずつ双方の日常的なかかわりを増やしていくことを提案し、日本人と外国籍者がともに社会的関係を構築する必要性についてお話しました。

第3部では、日本の在留外国人数が過去5年足らずで島根県の人口に匹敵するほど増加しているなど、統計を具体的に提示しつつ、時折、映像を交えながら、様々なカテゴリーの外国籍者の活躍と、国際交流の領域を超えて外国籍者を生活者として包摂しようとする取り組みを中心に紹介しました。特に、ある地域では、自治体がそれぞれの母語で技能実習生に招待状を送った結果、技能実習生も成人式に参加することができること、また、専門学校で習っている手話を活かしながらコンビニでアルバイトに従事する外国籍者のこと、さらに、介護施設で利用者さんの信頼を得ながら活躍する「特定技能」を持つ外国籍者のことを紹介しました。外国籍者が地域の構成員であるということは、ライフステージをともに歩むことだと考えます。

出典:四日市市多文化共生推進室提供

最後は、「共生から共創へ」ということで、

  • 外国籍者は、国籍や在留期間、在留活動など様々な「違い」があるため、支援が必要な部分もあるものの、ほんのちょっと足りないところを補うことができれば、誰もが能力を発揮できるようになること。そして、外国籍者と日本人が相互補完的に社会を創っていく仲間になれれば、社会全体がより良くなること
  • コミュニティの構成員に着目し、特色ある取り組みができるところ(地区、学校、職場など)は、今後、どんなに社会が変容したとしてもコミュニティのレジリエンスを高めることができること
  • 地域における外国籍者の増加と多国籍化、居住地域の分散化が進むなか、個人や1つの組織では対応できないことも増えていくことが予想されるため、一人ひとりのちょっとした心がけと様々な「境界」を超えた連携・協働がますます重要であること

という考えを共有しました。

出典:四日市市多文化共生推進室提供

質疑応答では次々と挙手があり、「難民が難民でなくなる日は来るのか」、「多文化共生に向けて、市民にできることは何か」、「自治会に入らないというのは、日本人の若者にも共通する問題ではないか」など様々な観点から、質問やコメントが出されました。

講演会終了後には、四日市市多文化共生推進室より、講演会に関するアンケートの集計結果を共有していただきました。箇条書きで表記してもA4用紙5ページ分にも及ぶほど、たくさんのコメントをお寄せいただき、参加者の皆様の熱意に触れ、「四日市市はまだまだ良くなる!」と感じた次第です。また、手話同時通訳と要約筆記もあるインクルーシブな講演会でしたので、講演の構成、言葉選び、話すスピードなどの点において、「誰一人取り残さない」ためにはどうすれば良いか考えながらお話する貴重な機会となりました。

長丁場だったにもかかわらず、熱心に耳を傾けていただいた皆様、誠にありがとうございました。また、調査・研究から啓発活動まで一貫して携わる機会を頂戴しました四日市市多文化共生推進室の皆様、タイミングを合わせながら手話と要約筆記を行っていただきました皆様に心より御礼申し上げます。今後も四日市市における多文化共生の発展を祈念いたします。