三重サテライト通信

地域未来社会概論(7月4日)のご報告

本機構では、地方創生や地域課題の解決に関心を持つ、多様な所属の学生に対応するために、2019年度より部局横断型教育プログラムを開講しています。その一つに、オムニバスで開講している「地域未来社会概論」があります。

7月4日の第12回講義は、三重サテライトが担当しました。これまでの東京一極集中を見直し、地域社会へ目を向け、「Society 5.0」のモデル構築を目指す本学にとって、第一次産業、第二次産業、第三次産業と幅広い産業が根付く三重県は、本学の教員や学生が各々の関心や専門性に基づいて各分野の地域課題を検討するうえで絶好のフィールドです。三重県と本学の連携協定、ユマニテクプラザ5者連携協定(三重県、三重県産業支援センター、三重大学、みえ大橋学園、東京大学地域未来社会連携研究機構)、四日市市と東京大学地域未来社会連携研究機構の連携協定は、地域社会へ外からアプローチする本学の教員や学生と地域社会を繋ぐ重要なものです。

では、東京大学が地域社会へ参入すること、東京大学と連携することを地域の連携先の方々はどのように考えていらっしゃるのでしょうか?北陸サテライトが担当した第11回講義で「東京大学が地域に入って行くことを地域の方々はどう思っているのか?」という質問が出されたことを受け、ぜひ、当事者の生の声を聞いて、地域連携を多角的に捉えて欲しいと思い、今回は、ユマニテクプラザ5者連携協定を締結している関係者の方々にお声がけしました。

当日は、

・三重県産業支援センター 北勢支所長 冨田康成 氏

・三重大学 副学長・北勢サテライト長 今西誠之 教授

・みえ大橋学園 ユマニテクプラザ館長 藤井信雄 氏

(順不同)

以上、3名の方々に講義の一部にご参加いただき、一言ずつ、お考えを述べていただきました。

まず、冨田康成氏(三重県産業支援センター北勢支所長)は、公益財団法人である三重県産業支援センターは、企業が何か新しいことを始めたい時に、産学官で総合的に連携してサポートすることを目指していると話しました。そして、冨田氏自身が、長年の県庁での勤務経験と人脈を活かし、例えば、東京大学の特任助教が多文化共生の分野でフィールド調査を進めていくにあたって、県庁や国際交流財団など、県レベルで在留外国人の施策を扱う関係諸機関への橋渡しをした、という例を紹介し、そのような連携の仕方もあり得ると述べました。

次に、今西誠之教授(三重大学副学長・北勢サテライト長)は、三重大学は地域との「共創」を目指し、サテライトは企業、自治体、大学を繋ぐ“ハブ”としての役割を担っていること、そして、三重県は北部と南部では課題が全く異なるため、ユマニテクプラザにある北勢サテライトを含め、県内に4つのサテライトを構えていることを話しました。特に、先端産業が集積し、日本有数の工業地帯である北勢地域では、工学部が中心となって企業のニーズに答えようとしているものの、規模の大きい学際的課題には1つの大学・学部で対応することは難しいため、他大学との連携が必要不可欠である、という考えを示しました。

最後は、藤井信雄氏(みえ大橋学園ユマニテクプラザ館長)からの話です。藤井氏は、四日市市の元副市長でもいらっしゃいます。四日市市の長い歴史を概説し、四日市市には宿場町だった頃の自由さが根底にあること、そして、明治時代以降は日本の近代化の縮図と言われる発展を繰り返しており、四日市ぜんそく発生後にも環境改善と産業再生を目指し、産業集積の強化やエネルギー分野のインフラ整備、住宅開発を進めてきたという四日市市の特性について説明がありました。また、特に、四日市市の発展の背景には、企業同士の連携、公民での協働、公的セクターの貢献、大学との共同研究や大学の先達の構想を基にしたまちづくりなど、様々な産学官連携の積み重ねがあったことを説明しました。そして、このような特性を持つ四日市市は、都市が抱える課題、とりわけ、今後の都市経営をどうすべきか、という課題について自治体と大学が一体となって、新たな提案を示していくフィールドとして極めて魅力的な都市であり、若い学生の意欲的なアプローチを大いに期待している、と述べました。

3名の皆様には、大変貴重な機会をご提供いただきました。

ご多忙のところ、講義にご参加いただきましたことに心より御礼申しあげます。

さらに、講義では、研究事例の紹介として、外国人の出入国在留管理に関し、国家の自由裁量を認める国際的枠組みと政策の「意図せざる結果」の連続によって生まれた、日本の在留外国人を取り巻く政策的環境と、在留外国人の地域における動向を説明し、地域に入って研究することの意義を提示しました。フィールドワークだけで完結させるのではなく、調査・研究を通して得られた知見をもとに、自治体や研究協力者の方々と意見交換を重ねることで、新たな「地域の知」が培われます。

今回の講義において、3名の皆様から頂戴した地域からの視点も踏まえ、これからも学生には、自分自身の地域貢献の在り方を模索していって欲しいと思います。