三重サテライト通信

ユマニテクプラザ5者協定締結4周年記念セミナーのご報告

3月14日(火)に、三重サテライトが入っております、ユマニテクプラザにて、5者の皆様とともに、「ユマニテクプラザ5者協定締結4周年記念セミナー」を開催しました。当日は、第1部で、稲葉忠司教授(三重大学副学長兼北勢サテライト長)と坂田一郎教授(地域未来社会連携研究機構長)がそれぞれ報告を行い、第2部で、藤井信雄氏(みえ大橋学園ユマニテクプラザ館長)の進行のもと、廣田恵子氏(三重県副知事)、岡村昌和氏(三重県産業支援センター理事長)を交えて、パネルディスカッションを行いました。当日は、対面とオンラインを合わせ、合計90名ほどの参加がありました。

第1部では、まず、稲葉忠司教授(三重大学副学長兼北勢サテライト長)が、工学研究科研究紹介専攻別セミナー、日本語教育研究会、IoT/B-5G研究会、未来都市デザイン研究会、北勢スマート農業研究会のほか、四日市市受託事業として、四日市市民大学を開催するなど、ユマニテクプラザで展開している多種多様な研究会を紹介しました。また、地元企業との技術開発や、「みえの未来図共創機構」における三重県との地域創生に向けた取り組みなどをお話ししました。

続いて、坂田一郎教授は、世界がデジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)という「二重のパラダイムシフト」の渦中にあることを踏まえ、新たな時代において、企業が何を求め、「知」の拠点がどのような役割を担うのかについて、お話ししました。

具体的には、まず、Society4.0から5.0への移行期における企業の戦略として、四日市市も強みとするセンサー、ロボット、材料などのフィジカルに、サイバーを融合し、さらに「新しい社会的価値」を付加することで、勝ち筋に繋がることをお話ししました。“モノ”から“知・情報”へと価値創出がパラダイムシフトする中、サービス・プロダクトの成功事例として、北欧やアメリカ合衆国で取り入れられている、スマートフォンを端末としてデジタル空間と連動させた電動キックボードのシェアリングを紹介しました。

このような取り組みを行うためには、従来型の経済的価値創出だけでなく、これまで企業がビジネスとしては重視してこなかった社会的価値又は新しい価値の創出が必要になります。そのため、企業には、「ホームグラウンド」の外側で新たな活動を起こすことが求められますが、このようなことを企業だけで行うことは難しいため、ここを助けることが「知」の拠点の新たな役割となります。特に、ユマニテクプラザは、交通の便が良いところに位置しており、知的対流を盛んに行えるという利点を持ちます。地の利を生かして「予定調和なき知的対流」の場となることで、一見、距離のある分野同士を繋ぎ、価値創出の場となることが可能です。ユマニテクプラザがハブとなって、地域を「新しい学習地域」へと変革させ、地域の新たな価値を創出するための、多様な知見やノウハウを提供していくことを期待したいです。特に、三重県は、エネルギー、工業から豊かな自然資本まで多様性を持った地域であるため、それらの間の「知の結合」を通して、産業界だけでなく、地域全体が変わり得る可能性があります。ただし、サテライト単独だけでは限界があるため、拠点全体で取り組むことが重要であることを強調しました。

第2部のパネルディスカッションでは、①ユマニテクプラザへの立地の経緯と目的、②民間企業のニーズ把握と産学官の役割分担、③産学官連携拠点の次のステップという3つの観点について、三重県、三重大学、東京大学、三重県産業支援センターがそれぞれの立場からお話ししました。

まず、①ユマニテクプラザへの立地の経緯と目的について、坂田教授は、北部の工業力から県南の豊かな自然資本など、三重県の多様性に着目したという経緯を説明し、「都市と自然資本」など離れている領域を交差させる活動を進めて行きたいという考えを示しました。そして、通信、AI、データサイエンス、防災領域、超高齢化領域、自然資本領域といった課題が各地域に共通してあるとし、今後は、多文化共生などWell-Beingの領域についても進めていきたいとお話ししました。

次に、②民間企業のニーズ把握と産学官の役割分担については、戦後、日本の輸出が安定的に推移してきた理由として、その主役の交替や輸出の形の変化があったことをあげ、柔軟性が日本にとって大きな力になっていると述べました。そして、その柔軟性を発揮するために、①DX×製造業、②既存の分野と新しい分野の両立、③スタートアップとの提携をあげ、大学がお手伝いしながら、日本の柔軟性を新たに作り直したいという考えを示しました。

最後に、③産学官連携拠点の次のステップとして、行政機関に対し、キャンパスにも来訪してもらう形で、もっと双方向の関係を築きたいという思いを述べました。また、教育については、例えば、アントレプレナーシップ教育について、東京大学が公開している優れたキャピタリスト、アクセラレータの専門家、起業家などの講演動画を活用して、地元主体で地域のニーズに合った教育プログラムを構成してもらうことが考えられるのではないかとの提案を行いました。また、今春に東南アジア諸国やインドから研修生の受け入れを再開するIATSSフォーラム様に対しては、日本のシステムは、日本式の社会・文化が前提となって機能しています。従って、それが異なる国・地域に移植していくための、狭義のシステムの領域だけでなく、文化や社会を含めて、異なる分野を交差させながら、研修プログラムを総合的に作っていくことを助言しました。

質疑応答では、指定質問者の、株式会社シー・ティー・ワイICTソリューション推進室課長の山本龍太郎氏より、「外からの視点として、四日市を中心とした北勢地域には、どんな期待が持てるか」というご質問を頂戴しました。それに対し、坂田教授は、成功している地域の条件として、外の人のニーズではなく、自分たちが作りたいまちを追求していることをあげ、「唯一無二」のコンテンツをどのくらい作れるかが勝負だと答えました。

5者協定を締結してから、4年が経過する中、県内の企業や市民の皆様ともさらに連携を強化していくために、5者それぞれが、当初の目的を振り返り、お互いに課題を見出し、意見や要望を出し合う場として、非常に有意義な時間となりました。三重サテライトとしても役割を再認識し、心機一転、皆様と連携しながら、地域社会の発展に貢献して参りたいと考えます。

年度末のお忙しい中、お集まりいただきました皆様、誠にありがとうございました。今後ともご指導ご鞭撻のほど、どうかよろしくお願いいたします。